南半球の星空

南緯45度に位置するニュージーランド南島のクイーンズタウン
町の郊外にあるプチホテルのベランダと庭の芝から満天の星空を見上げると何かがおかしく感じる。
東京で見慣れた筈の季節の星の位置がなんとなくおかしい。
東京の冬空にはオリオン座と大犬座の一等星一等星シリウスが南天に見える。
そのときシリウスはオリオンの左に位置している。
しばらくして気がついた。
南半球ではオリオン座が北天にあるので、東京で見るときと同じように北を頭にして見なければ同じ位置関係に見えない。
ニュージーランドで北天にあるオリオンを見るときは無意識に頭を南にして見るため、オリオンとシリウスの位置が逆になってしまうのだ。
プチホテル周辺は民家が少なく繁華街の明るい照明もないので天の川のくびれまではっきりと見える。
南十字星は天の川の中にあるが2等星の明るさのためそれほど目立たない。
北天の夏の大三角形、白鳥座の十字と比較すると可也小さく感ずる。
唯一、残念だったのは日本から見ると南の地平線にやっと見えるさそり座のアンタレスが見えなかったことだ。
それでも南半球の星空を充分に堪能できた。


東京

アコースティックギターが奏でるメロディーが混雑した人の間をすり抜けて
紫の煙と絡み合いグラス壁に当たる氷の音がカスタネットのように心地よく響くとき、
全てのことから解放された人々のシルエットはより一層魅力的に見える。
一流の証となるホールでのコンサート、弦を切りながらも懸命に演奏するバイオリニストがいても、
全ての人が演奏に魅了されているとは限らない。それを隠すことなく表現してしまう素直さに脱帽。
ヒートアイランドの原因と言われた沿岸部の高層ビルの最上階には、
東京湾を見渡せるレストランとバーが立ち並び、BGMとピアノライブが都会の香りを醸し出す。
高層レストランにいることを感じさせてくれるのは、ビルの高さでなく多分パノラマビューだろう。
数年たって街の景観が変わっても、そこに息づいていた頃の記憶は今も変わらない。
焼酎のカクテルを飲んで少し酔いが回っても、酔ってはいないと人は言う。
外の冷気で目が覚めて、コートを着込んで歩く夜のオフィス街は無人の街。
千代田の森はさながらセントラルパーク、一国に沿う濠端の歩道は異次元空間。
暖冬の副都心、師走のパークの森は静寂で、駅周辺の喧騒とはほど遠い。
それでも時は過ぎてゆく。

音楽と星空と


深夜、立体交差で周囲に騒音が漏れない構造の環状8号線沿いに歩く家までの10分間、
ワイシャツの胸ポケットに携帯を入れ、携帯にダウンロードした好きな曲を聴きながら環状8号線を歩いている。
駅から自宅までは行きかう人も少なく、胸元から聞こえる曲を聴きながら毎日のように家路につく。
サンタナ、サイモン&ガーファンクル、エリック・クラプトン、ケニー・G、ビーチ・ボーイズ、サラ・ブライトマン、
ロバータ・フラッグ、ベン・E・キング、ホイットニー・ヒューストン、ダイアナ・ロス、サラ・ヴォーン、アレサ・フランクリン、
レイ・チャールズ、ビリー・ヴォーン、ベニー・グッドマン、パーシー・スレッジ、キングストン・トリオ、
スリー・ディグリーズ、コニー・フランシス、プラターズ、ジミー・スミス、パティー・ペイジ、ジュリー・ロンドン、
ザ・ダイヤモンズ、トーケンズ、デル・シャノン、ルイ・アームストロング、ママズ&パパズ、エンヤ、プレスリー、
プロコルハルム、カーペンターズ、山下達郎、チューリップ、オフコース、吉田拓郎、森山直太郎。
深夜、冷えきって澄んだ空気に小さな音量ではあるが深々と響き渡るサウンドは、さながら深夜のコンサートだ。

星空

帰途、駅の近くにある駐輪場を出て右に曲がると、南の空にオリオン座が見える。
月日が経って周辺の風景も変わっていくけれど、季節毎に現れる星は以前と変わらない。
空気が澄んだ冬の空には、シリウス、リゲル、ペテルギュース。
春の空には、デネボラ、スピカ、アルクトゥールス。夏になれば、デネブ、ベガ、アルタイル。
それぞれの星が、これまでと変わらない色と明るさで輝いている。
夏、あぜ道を歩きながら眺めた“天の川”。
冬、北風の吹きすさぶ中、毛布に包まってラジオを聴きながら見た“月"
秋、雲が出ないことを願いながら明け方近くまで眺めていた“流星群”。
時と場所が変わっても、星はあのときの夜と同じように今も輝いている。



星座宇宙博物館

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